ロコモーションスコアを用いて、跛行を早期に発見する
ダリル・クラインシュミット博士
ジンプロコーポレーション
人間は調子の良い時、立ち姿が大きくなり、歩幅を広くして歩くことが出来ます。これは動物においても同様です。ただし、乳牛、肉牛、豚の生産現場において、動物の肢蹄の健康状態に影響を及ぼす要因は、人間と若干異なるかもしれません。農場経営に直接的もしくは間接的に影響を及ぼす前に跛行を早期に発見するための、費用のかからない、客観的かつシンプルな観察方法として、ロコモーションスコアが生み出されました。
跛行にかかる費用
跛行により、乳牛においては乳量の減少や繁殖期間の延長が見られ、肉牛では平均日増体量が低下し、母豚では連産性と生産性が損なわれます。
農場全体における跛行の経済損失を計算する上で最も難しいことは、跛行の発生割合を把握することです。ロコモーションスコアは蹄病記録と併せて用いることで、跛行の発生割合、跛行を引き起こしている蹄病変の種類、新規罹患であるか慢性罹患であるか、治療が有効であったかを評価する手助けとなります。
ミシガン州立大学のスプレッヒャー博士は1997年に、起立状態と歩行状態を観察して5段階で評価を行う、乳牛のロコモーションスコアを確立しました。このロコモーションスコアでは、牛の負重分布を表す背線に特に着目しています。この発表の後、ジンプロ社はカンザス州立大学と共同で、肉牛の4段階のロコモーションスコアを確立し、更に、ミネソタ大学と共同で母豚のロコモーションスコアを確立しました。どちらも乳牛同様、背線と歩様に着目しています。
脊柱の湾曲状態の変化と蹄病変の存在には高い相関関係があることが、研究から判明しています。従って、この変化が跛行の最初の兆候となり、より病変が重篤化する前に治療を行うべきであるという目印と言えます。背線が少しアーチを示した時点で発見することで、跛行を初期ステージで摘発し、より深刻な状況に陥る前に治療を施すことが出来ます。
牛の蹄の問題と蹄病変は感染性(湿潤環境や下肢の衛生状態の悪化等)と非感染性(過密飼養や長い起立時間等)の要因によって引き起こされると考えられます。一般的にいずれの場合でも、ロコモーションスコア1、2の状態を超えて一度跛行状態に陥ると、その後は重篤化するばかりで、牛の健康状態をより悪化させてしまいます。
*弊社HP上にロコモーションスコアの各スコアの歩様動画を公開しております。以下のリンクよりご参照下さい。
ロコモーションスコア動画
ロコモーションスコアの基本
豚でも、肉牛でも、乳牛でも畜種に関わらず、ロコモーションスコア測定には以下の共通項目があります:
- 定期的にスコアを測定する
- 固く、平坦で、滑らない地面に動物が立っている時と歩いている時に測定を行う。滑りやすい床やすのこ床では、動物の歩幅が自然と狭くなるため、正確なロコモーションスコアを測定出来ない
- 走っている動物は、測定しない
- 群飼養の場合、群の大部分で共通する問題を発見出来るかもしれないので、群全体の動物を一度に測定する
- 乳牛は可能であれば搾乳前に測定する。一定時間強制的に立たされると、実際には跛行牛ではなくとも、跛行しているように歩く場合がある
測定にはいつも同じ人たちが立ち会う。観測を続けることで個体の動きを覚え、跛行した場合の兆候をより早く発見出来る可能性がある。
農場における、跛行の兆候
農場において跛行している動物が示す兆候を考えてみましょう。以下の様な動きが大きくなるほど、ロコモーションスコアの数値が上がります:
- 跛行している肢が接地した際の、頭の上げ下げ(ヘッドボブ)
- 後肢に痛みがある場合、背線もしくは脊柱がより曲がる
- 歩幅が狭くなり、痛む蹄への負重を避けて反対の蹄に加重することで健康な側の副蹄がより深く沈み込む
- 通常の歩行速度よりも遅くなる
- 痛む肢を休ませるために、頻繁に止まる
- 急な角度で旋回するのが大変であったり、牛床内で起立が難しくなる
農場での跛行問題を評価する手助けとなる、ジンプロ社の乳牛における跛行評価プログラムであるFirst Step、肉牛の管理プログラムであるStep-Up、豚の跛行予防プログラムであるFeet Firstについての詳細は、弊社の営業担当者までお問い合わせ下さい。