ワクチン投与で肉牛の免疫反応を高める
クリス・アシュワース博士、獣医師
ジンプロコーポレーション
肉牛であろうと乳牛であろうと、育成牛でも子牛でも、ワクチン投与は農場において一般的かつ定期的に行われる管理作業です。生産者の皆様にとって、ワクチンプログラムとは、単にワクチンを投与する作業かもしれませんが、最も重要なのは、牛の免疫機能がどれ位ワクチンに反応したかです。ワクチン投与に対する牛の反応を免疫化と呼び、この達成が目標になります。
ワクチン投与の目的は、病気を引き起こす原因菌と同じ病原体を不活化、もしくは弱毒化させた状態で牛に曝露することで、感染の危険性に晒された時のために免疫を構築することです。経鼻もしくは皮下にワクチンを投与すると、IBRといった抗原が含まれるワクチン片が牛の免疫機能を刺激して、ワクチン片に対応した抗体が産生されます。抗体はいくつかの疾病に対して、長期的に免疫を働かせるための重要な役割を持っています。将来、牛が接種したワクチンに対応する疾病に感染する危険性に晒された時に、免疫機能の1つである記憶細胞が抗原を覚えていて、それらの細胞が分裂・増殖して抗体を産生します。
どのように抗体は感染と戦うのか
牛が腸疾患に感染した場合、抗体は血管から腸壁に移動し、腸管腔に到達します。これらの抗体は疾病を引き起こす細菌やウィルスと結合し、糞中に排泄させたり、リンパ節に運んで処理、殺傷、体内からの除去を行ったりします。
しかし、体の他の部分にある抗体は異なった働きを示します。例えば肺組織で働く抗体は、細菌やウィルスと結合することで他の免疫細胞に攻撃させるための目印を付けたり、腸での働きと同じように、リンパ節に運んで処理したりもします。
抗体には長期的な免疫付与と、短期的な免疫付与がある
抗体の中には、体内に数ヶ月しか存在しないものと、数年に亘って存在して長期的に体を感染から保護するものがいます。破傷風は、免疫機能を強く刺激する抗原であることが知られています。免疫機能は長期的に破傷風を記憶細胞で覚えています。
一方で、コロナウィルスのような別の病原体は、破傷風ほど免疫機能を刺激しません。従って長期間免疫機能に残る抗体を産生することはありません。ウィルスは免疫機能からうまく隠れることが出来るので、動物や人によっては感染に気付きにくい場合もあります。不顕性感染のままウィルスは増殖を続け、宿主の体内で甚大な量にまで増えてしまうこともあります。この状況では長期記憶細胞への刺激が極端に弱くなり、抗体産生もほとんど行われません。これが、ワクチンには毎年必ず接種しなければならないものと、接種頻度が低いものがある理由です。
上記の免疫機能を働かせるためには、エネルギー、タンパク質に加えて、銅、亜鉛、マンガン、セレンといった微量ミネラルが必要です。これらの微量ミネラルは、免疫機能において多くの異なる酵素作用に関与しています。
亜鉛にはRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)の働きを阻害する抗ウィルス剤としての作用があります。RdRPはコロナウィルスを始めとした家畜/家禽に影響を及ぼすことが知られている多くのRNAウィルスの複製を行う酵素です。さらにセレンは抗酸化作用を有していることで酸化ストレスを緩和し、好中球とリンパ球の働きを活性化させてウィルス感染を明確に識別します。
銅も同じく酸化ストレスを低減することでT細胞の増殖を刺激し、抗体産生の手助けとウィルスに感染した細胞を除去する働きがあります。マンガンはムチン生成を行い、病原体が体内に入り込む第一防御層を守っています。
牛の感染性疾患やワクチン投与に対する免疫反応は、これらの微量ミネラルに大きく依存しています。しかし、市場にある全ての微量ミネラル製品が同じではありません。ワクチンへの反応を高め、ウィルスの脅威を抑えるための最良の微量ミネラル給与プログラムについて、弊社営業担当にお問い合わせください。