生産現場における脱水状態の原因と症状
動物において、水は酸素に次いで2番目に重要な栄養素であり、体内における全分子の98%、成畜の総体重においては50~81%を占めています。哺乳類は、体内の水をほんの10%失っただけでも、重度の疾病に陥ったり、死の危険性に冒されることになります。
従って、動物の健康と生産性を維持するためには、動物が高品質の水を十分量摂取出来るようにすることが重要です。
水は下記の様に多くの体内機能の多くにおいて重要な役割を担っています。
- 消化及び代謝で生じる老廃物の除去
- 血液の浸透圧調節
- 乳と唾液の生成
- 栄養素やホルモン、その他化学伝達物質の体内運搬
- 皮膚や呼吸器官からの蒸発による体温調節
また、水は組織の維持、眼の発達、体温調節、ミネラルの恒常性維持、体圧においても役割を担っています。
脱水状態を防ぐには飼養管理が重要
脱水状態は、暑い時期に十分量の水が水槽及びニップル中に確保出来ていない場合や、吸水管が詰まって適切な水量が流れていない場合などの飼養管理の不備が原因で起こります。更に、脱水状態は水質が悪い場合や、動物が新規の水源に慣れていない場合にも起こります。
晩夏に雨水を飲用水に用いる場合、藍藻によって汚染されていることがあります。藻類は水の味に影響を与え、動物が水をあまり飲まなくなってしまいます。豚の場合では、特に離乳期子豚で疾病を引き起こすこともあります。
見たことのない給水器(水槽、ニップル)のある群に動物を移動した際、飲水方法が分からないために、飲水量が減少することがあります。この対策として、少量の水滴を水槽またはニップルから垂らしてみて下さい、そうすることで動物が水源を見つけることが出来るでしょう。
脱水状態は生産上の問題を引き起こす
脱水状態は、家畜生産における多くの生産要素に悪影響を与えます。脱水状態はタイトジャンクションや腸管の健全性を弱め、動物の上皮組織の強度を低下させてしまいます。これによって炎症問題が発生し、疾病や感染症に罹患しやすくなります。
また、脱水状態に陥ると、例えば乳牛においては乳生産量の減少といった、生産性の低下が起こります。脱水状態は一般的に飼料摂取量の減少を引き起こし、牛、豚、鶏において増体率を低下させてしまいます。
水は乳の87%を占めていますので、乳生産にとって水は重要な要素です。従って、脱水状態に陥った乳牛は、乳生産がほぼ停止してしまいます。
豚における脱水状態は、食塩中毒を引き起こすことがあり、それにより死に至ることもあります。豚における通常の体内塩分濃度は、水分が不足すると有毒となります。食塩中毒に陥った豚は、協調性が無くなり、持続的な痙攣を起こし始めます。飲水量を制限したり脱水状態に陥って、重篤な臨床症状を示したり斃死したりするのは、水を与えた際です。従って、豚が完全に水分補給出来るまで、水を慎重に与えることが重要です。
夏の脱水状態は、競走馬の様な持続力を必要とする動物で特に問題となっています。持久力トレーニングやレースを動物にさせる場合、前後に十分量の水を飲ませなければ、脱水状態に陥るでしょう。人間のアスリートと同様で、これにより腸管からの漏出が増加し、腸管上皮組織のタイトジャンクションが損傷してしまいます。その結果、有害な細菌や病原体、エンドトキシンと呼ばれる特定の細菌が排出する分解生成物が血流に侵入して炎症と別問題の連鎖を引き起こします。
脱水状態の可視症状
脱水状態の兆候には、身体的徴候と行動的徴候があります。一般的な身体的徴候として、沈鬱や張りの弱い皮膚、体重減少、粘膜と眼球の乾燥があります。
乳牛や肉牛が脱水状態に陥ると、眼球の陥没や沈鬱の症状が現れます。また前述の通り、泌乳牛が脱水状態に陥ると乳生産がほぼ停止してしまいます。
馬が脱水状態に陥ると、皮膚の弾性が低下します。これを確認するためには、肩上の皮膚を引っ張り数秒保持して下さい。その後皮膚を離して、皮膚が元に戻るまでの秒数を計測して下さい。もし脱水状態に陥っている場合は、皮膚が戻るまでに数秒掛かります。
豚における脱水状態の兆候には、喉の渇き、便秘、皮膚炎、食欲不振があり、それに続き神経過敏や明らかな難聴と盲目が起こることがあります。
また、以下が潜在的な脱水状態における行動的徴候です。
- 興奮状態になり、発情兆候を示さない
- 硬く、丸い糞をする
- 溢れた水を舐める
- 飼料を最後まで食べない
動物に十分な水分補給をさせる方法
動物に十分な水分補給を確実にさせるためには、以下の方法があります。
- 給水管を清潔にして下さい。漂白剤や過酸化水素水を用いることで、配管内の細菌を除去し、詰まりを防いでくれるでしょう。多くの生産者が、給水管が適切に作動しなくなるまで点検をしていません。給水管を適切に作動させるためには、毎年の入念な洗浄が必要です。そうすることで、適切に作動し続けることが出来ます。
- 水流を確認して下さい。約2L/分の流量が授乳期の母豚では推奨されています。若齢豚での流量は0.5~1L/分と、母豚より少なくとも問題はないと考えられます。十分量の水が水槽及びニップルまで確実に流れる様にして下さい。例えば、妊娠中の母豚は約4L/日の水を必要としますので、流量は少なくとも0.5~1L/分あれば十分でしょう。一方で、授乳中の母豚は、乳生産のために10~15L/日もの水を必要とします。従って必要に応じて適切に水量を増やす様にして下さい。
- 換気扇が適切に作動しているかを確認して下さい。換気扇が適切に作動することで、効果的に動物の体を冷却することができ、動物における水の利用を向上させることが出来ます。
- 水の嗜好性を検査して下さい。水が清潔で味が良いと、動物は水をよく飲みます。細菌やその他の汚染によって匂いや味が悪くなると、飲水量が減少してしまいます。信頼出来る検査機関で水質検査を行い、その結果を下に“ジンプロH2O水質分析プログラム”を用いて分析して下さい。プログラムにより得られた結果を栄養専門家や生産者の方々、獣医師が評価することは、改善点や潜在的な毒性の徴候を検討するのに役立ちます。このプログラムは、水質検査結果を分析し、水質基準と比較を行うことで農場の水質を評価するのに役立ちます。
ジンプロH2O水質分析プログラムに関して、または信頼出来る検査機関を選択する方法に関してのご質問、ご相談は弊社営業担当者までお問い合わせ下さい。