BCO、食の安全性及び免疫調節に対応するための第一防御線として重要な上皮の健全性
パコ・フェルナンデス博士、獣医師
ジンプロコーポレーション
上皮組織は、環境にまつわる問題から体を守る動物の第一防御線です。この防御線は、内蔵、血管、呼吸器官、生殖器官等の外側及び内側の表面を含み、これらの器官と環境中の細菌、ウイルス、真菌、その他の微生物との間の物理的バリアとして機能します。さらに、物理的バリアだけでなく、上皮組織は様々な抗菌効果を有する分泌物質を産生することも出来ます。また、呼吸器システムのように線毛を持つ上皮組織は、粒子や細菌を外部に排除します。
体内外間の物質交換を必要とする様な上皮組織は、上皮組織細胞が単層構造なので、特に不安定で危険です。消化管、呼吸器官、尿細管、毛細血管系等が例として挙げられます。これらの単層上皮組織器官には、特別なケアが必要となります。
単層上皮組織は、タイトジャンクションによって結合しています。このタイトジャンクションが損傷を受けると、体内に物質が漏れる状態となるleaky(リーキー)上皮となります。リーキー上皮は、細菌、ウイルス、その他外部病原体や毒素等の抗原が体内へ侵入することを許してしまい、免疫反応が引き起こされます。暑熱ストレスや高飼養密度によるストレス、精神的ストレス、代謝ストレス、コクシジウムあるいはクロストリジウム感染等、あらゆるタイプのストレスが、フリーラジカルや炎症性サイトカインの過剰産生を誘導し、これらによりタイトジャンクションが損傷を受け、単層上皮組織の健全性を壊します。
ブロイラー鶏の上皮組織が弱められたり、細菌やその他の抗原が体内に侵入した時、疾病あるいは炎症反応症候群(SIRS)が起こり、鶏の発育や生産性が損なわれることがあります。さらに、リーキー上皮が、細菌性軟骨壊死骨髄炎(BCO)、皮膚炎、敗血症等の問題を引き起こし、このようなブロイラー鶏が出荷されると食の安全性が損なわれます。
亜鉛、マンガン、銅のような微量ミネラルは、免疫応答の向上や損傷を受けた上皮組織の改善を、迅速且つ力強く進めるために重要です。しかし、無機微量ミネラルの使用では十分ではないと考えられます。皆さんの栄養プログラムにジンプロ・ミネラルを加えて頂くことで、上皮組織の健全性を向上させるために必要な栄養、また免疫系や発育及び生産性向上に利用できる栄養を確実なものにします。そして、最終的にBCOや食の安全性に関連する各種問題を防ぐことができ、免疫調節機能を助けることに繋がります。
細菌性軟骨壊死骨髄炎(BCO)とは?
BCOは、世界的に、特に無薬飼養農場において認められる跛行の最も一般的な原因です。BCOによる経済損失は、通常、1〜3%、重症例では10〜15%にもなると言われています。ブロイラー鶏が、出荷体重に達すると、大腿骨と脛骨間の関節軟骨における成長板に微小破壊が認められます。ブロイラー鶏の上皮組織が、ストレス等により障害を受けると、気道や消化管から細菌が血流へ侵入し、結果として、上述の微小破壊部分に達し、増殖、壊死を許してしまいます。
BCOの発生は、若齢時に始まります。それは卵内の胚の時期においてでも起こり得ます。細菌が血流に侵入すると、細菌は生き残る、あるいは貪食細胞(白血球、マクロファージ)によって殺菌されます。生き残った細菌は、体内で機会を待ち、もし上述の微小破壊が起こった場合に、細菌はBCOを引き起こします。
ブロイラー鶏における食中毒を制御するために重要な上皮の健全性
上皮の健全性が弱められると、病原性細菌の血流への侵入を許し、結果としてブロイラー鶏の筋肉内での増殖を許すことになります。これらの細菌の中には、大腸菌、黄色ブドウ球菌、腸球菌、サルモネラ菌等、ヒトに対して病原性を示す細菌も含まれます。通常、ブロイラー鶏が、これらの病原性細菌に暴露されるのは、正常腸内細菌叢が出来上がる若齢時です。BCOのように、これらの細菌は、炎症反応あるいは上皮バリアが損傷を受けるようなストレスが起こるのを待ち、それらが起こると感染します。
病原性細菌が、ブロイラー鶏の血流に侵入すると、細菌を排除するために免疫システムが作動します。しかし、それが出荷間近のブロイラー鶏に起こった場合、細菌は損傷した骨中に存在し、処理場に出荷された段階には筋肉中に拡がっていることがあります。だからこそ、これらの病原性細菌が血流や骨に侵入し、ブロイラー鶏の最終製品での食中毒を引き起こさないためにも上皮の健全性を保つことが重要です。病原性細菌の侵入に起因するその他の問題として、皮膚の擦過傷から起こる蜂窩織炎や、気道上皮あるいは腸管上皮から細菌が進入して起こる敗血症があります。これらは処理場での廃棄の主な原因となります。
上皮の健全性維持に重要な免疫調節
ブロイラー鶏が、上皮に障害を受け、抗原侵入を受けると、抗原を中和し、上皮を修復するために免疫調節機能が重要となります。免疫調節機能とは、抗原侵入に対して迅速且つ強固な炎症反応を発動させるための、動物の自己免疫制御能力のことです。重要なことは、調節という言葉の中に、制御という言葉が含まれることです。すなわち、炎症が、動物に対して有害となる前に、正しいタイミングで炎症を止めることが大切です。
亜鉛やマンガンのような微量ミネラルは、上皮組織の生成や維持、そして充分な免疫応答を発動させるために重要です。ブロイラー鶏は、十分な免疫反応、発育や高い生産性のために十分量の栄養が必要であり、そのためにこれらの微量ミネラルを必要とします。その微量ミネラル源として、無機微量ミネラルでは十分とは言えないと考えられます。
ブロイラー鶏の免疫機能を高めるジンプロ・ミネラル
炎症が起こると、免疫システムは、炎症に対応するためにより多くの栄養を必要とし、結果として、増体や繁殖等に使われる栄養量が減少します。ジンプロ・ミネラル由来の亜鉛やマンガンを配合飼料に添加することにより、腸管粘膜上皮のタイトジャンクションが維持、強化され、腸管腔内の細菌の侵入を防ぐことが出来ます。これにより炎症の低減が期待出来ます。
ジンプロ・ミネラルは、他の有機ミネラルと異なる経路、すなわち小腸粘膜上皮のアミノ酸輸送体を使って動物の体内に吸収されます。微量ミネラルは、通常、飼料や水に含まれる様々な物質と結合し、体内への吸収を阻害されますが、ジンプロ・ミネラルはそれらの吸収阻害物質による干渉をほとんど受けず、小腸の吸収部位まで到達することが出来ます。すなわち、ジンプロ・ミネラルのリガンドとして使用されているアミノ酸が、効果的な吸収を確実なものとしています。
ジンプロ・ミネラルは、無機微量ミネラルとは異なった形態で血流に入り、また出て行きます。そして、無機微量ミネラルよりもゆっくり排泄されます。従って、ジンプロ・ミネラルを給与したブロイラー鶏は、より多くの微量ミネラルを体内に取り込み、これにより栄養を免疫反応にしっかりと配分することが出来ると共に、発育や繁殖に使用される栄養を十分量残すことが出来ます。
30件の試験の結果から、ジンプロ・ミネラル由来の亜鉛またはマンガンの単独給与、あるいは併用により、鶏の上皮組織の強度が30%以上強くなることが証明されています。更に、23件の試験の結果から、ジンプロ・ミネラル由来の亜鉛またはマンガンの単独給与、あるいは併用により、鶏の腸管の強度が15%以上強くなることも証明されています。
鶏における、ジンプロ・ミネラルによる免疫機能の強化や生産性の改善に関するご質問、ご相談は弊社営業担当者までお問い合わせ下さい。
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