乳生産と農場利益のために重要な飼料効率
農場において、利益と生産性に影響を及ぼす要因はいくつかありますが、定期的にチェックすることが必要なものが1つあります。それは、飼料効率です。
飼料効率は、乾物摂取量1kg当りの乳量もしくは増体量で求められます。言い換えると、いかに牛が効率的に飼料を乳に転換したかを示すものです。
飼料効率は農場利益を決めますので、しっかりと把握しておくべき重要な数字です。飼料費を削減しながら同等もしくはより多くの乳生産ができれば、経営がより良くなるということです。
酪農における飼料効率の経済性
農場において飼料効率は重要な数値であり、定期的にチェックすることが求められます。同時に、利益についても見なければいけません。飼料効率が高いことが、必ずしも常に利益に繋がるわけではありません。
2つの農場があると考えてください。1軒は高乳量の牧場ですが、これが必ずしも利益の出ている農場を意味しているわけではありません。もしこの農場が、高乳量を達成するためにより多くの飼料費をかけていたら、利益を食うことになります。
同時に、飼料効率が高いことが高乳量を意味するわけでもありません。ある農場で安定的に乳量を維持していたとして、飼料費が安くなれば、利益が増えます。
飼料効率を高めるために利益が少なくなっているのであれば、飼料効率が高いことはあまり意味がありません。
農場における飼料効率の計算方法
飼料効率を計算する際には、エネルギー補正乳量を考慮してください。現在の農場におけるエネルギー補正乳量がどのくらいかは、こちらのHP(Feed For Less; 英語)からご計算ください。
飼料効率を求めるためには、エネルギー補正乳量を実際の乾物摂取量で割ってください。しかし、正しい結果を得るには、正確な乾物摂取量測定が必要です。
飼料効率を求めるための正確な乾物摂取量の測定
飼料効率を計算する時に、農場では正確な乾物摂取量を計測する必要があるという大きなハードルに直面します。乳量計算は簡単です。しかし、正確な乾物摂取量測定のためには、さらなる段階が必要です。
乾物摂取量を追っていくことはそれほど難しくありませんが、多くの農場では現実の数字を求める方法がありません。牛の前にどのくらいの餌を置いているかは分かりますが、残飼を計量している農場はそれほどありません。近い数字を推測することはできますが、正しいとは言えません。
最も確かな飼料効率を計算するためには、群ごとに残飼量を計り、正確な牛の乾物摂取量を求めることをお奨めします。群ごとの摂取量を計測することで、ある特定の泌乳ステージごとに望ましい飼料設計を組むこともできます。
酪農における飼料効率の業界標準
農場全体の飼料効率を見ることで一定の流れを見ることができても、それだけでは群別の違いも分かりませんし、農場で何が飼料効率に影響を及ぼしているかも分かりません。農場内でも、群ごとに飼料効率を計算し、その数値を業界標準と比較することが大切です。下の表は、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校農学部のマイク・ハッチェンス名誉教授が作成した、酪農業界における飼料効率の基準です。この表では、農場内のそれぞれの個別牛群において、搾乳日数別で飼料効率の業界標準値を分けています。
飼料効率に影響を与える環境と管理
乳牛においては、栄養素の分配が飼料効率に最も大きな影響を及ぼす要因の1つです。もし牛がより長い距離を歩き回ったり、ストレスと闘うためにより多くのエネルギーを振り分けないといけなくなると、乳生産のために用いるエネルギーや栄養素が少なくなります。従って、農場では牛群からパーラーまで牛が歩かなければいけない距離や1日に何回搾乳を行うのかを検討しなければなりません。
長靴を履いて泥の中を歩くことを想像してみてください。余計な時間がかかるし、そのために余分なエネルギーが使われることをご理解頂けると思います。牛舎がぬかるんでいると、牛は飼槽に行くために余計なエネルギーを費やします。乳生産に用いられるべきエネルギーと栄養素が、余計に歩くための徒労に代わりに使われてしまいます。
暑熱ストレスのような環境性のストレスも、乳生産に用いるべき栄養素を奪うので、飼料効率に影響を与えます。
飼料効率に影響を及ぼす飼料設計
高品質な粗飼料は飼料効率を高めます。ルーメンの機能を阻害することのない飼料設計を行うことが大切です。一般的に粗飼料と比べて濃厚飼料の方が、より安定的かつ多く消化されます。粗飼料の消化は、季節や収穫方法、貯蔵方法に影響されるので不安定です。
農場において最も多く見られる粗濃比バランスを崩す例は、穀物由来のスターチを大量に給与することです。この結果、乳量が増えて飼料効率が高くなるかもしれませんが、最終的にはルーメンpHの低下を招く場合があります。ルーメンpHの低下によってルーメンアシドーシスに陥り、発酵不良となると、乾物摂取量が低下します。その結果乳量が低下し、最後には飼料効率も低下してしまいます。
飼料効率の高い飼料設計を行うためには、粗飼料と濃厚飼料のバランスが大切です。濃厚飼料にはしっかりとタンパク質、ビタミン、そしてジンプロ・ミネラルを処方してください。
飼料効率を向上させるジンプロ・ミネラル
飼料設計を行う上で、微量ミネラルの供給源と濃度が重要な検討事項です。ジンプロ・ミネラルは体細胞数を低減し、肝臓機能を高め、乳量を増やし、蹄全体の健康状態を高めることが実証されています。
跛行
跛行は牛が健康に毎日を過ごすことや経済性に著しい影響を与える問題です。跛行は牛の歩様のみに影響を与えるわけではありません。炎症によって、他の問題も引き起こします。放置すると、乳量や繁殖成績が低下し、淘汰の可能性が高まり、無視できないほどの経済損失をもたらす場合があります。
乳房の健康
体細胞は、乳房内の慢性的な炎症を示す指標です。乳牛の慢性炎症を抑えることで体細胞数が低下します。その結果、炎症と対峙するためではなく、乳生産のためにより多くのエネルギーと栄養素を用いることができます。
アベイラ亜鉛由来の亜鉛や、複合製剤であるアベイラデイリー*やアベイラプラスに処方されている亜鉛、マンガン、銅、コバルト(※コバルトのみ無機)の給与によって、飼料効率が改善することが分かっています。育成牛及びフレッシュ牛において肝臓機能を強化し、腸の健全性を高めることで、炎症反応を緩和します。この結果、免疫機能によるエネルギーや栄養素の浪費を抑えて、より多く乳生産に向けることで飼料効率を改善します。
*日本での取り扱いはありません
農場におけるアベイラ亜鉛、アベイラプラス給与についての詳細は、弊社営業担当者にお問い合わせください。
関連記事:
微量ミネラルを適切に給与することは、牛の跛行と繁殖に確たる費用対効果をもたらす
NASEM2021による乳牛における栄養要求量の変更をリードする