肉牛の趾間フレグモーネは大きな問題である
ドワイト・キッキーファー
ジンプロコーポレーション
感染性の蹄病と跛行は肉牛においても、健全性全体と健康状態、そして生産性に多大な悪影響を及ぼしてしまいます。肉牛における趾間ふらんもしくは趾間フレグモーネといった蹄病は、ある地域の特定環境下で発生が確認されています。この蹄病は、肉牛のみならず、乳牛においても、月齢に関係なく跛行の主要な原因になっています。
肉牛の趾間フレグモーネは内外蹄の蹄尖の間に見られる皮膚の細菌感染で、疼痛と腫脹を伴います。趾皮膚炎と似ていると考えられやすく、実際に併発する場合もありますが、趾間フレグモーネは趾皮膚炎とは原因菌と感染経路が異なります。
趾皮膚炎は、未感染牛が感染牛と同居することで発生します。趾間フレグモーネの原因菌は、消化管に存在するフソバクテリウム・ネクロフォルムであるとされています。よって消化管から糞中に排泄されるため、飼養環境内における常在菌です。
極度に湿潤もしくは乾燥した環境下では、趾間フレグモーネの発生率が高まる
極度に乾燥した環境下では、趾間フレグモーネが発生しやすいとされていますが、極度な湿潤環境下ではより、発生率が高まるとされています。牛の蹄が常に湿った状態であると、蹄の上皮バリアが弱体化し、病変が形成されやすくなります。この状態では糞尿中の細菌が侵入しやすくなり、趾間フレグモーネの発生率が高まります。
極度の乾燥環境下において乾燥した皮膚は割れやすくなり、こうなると蹄の上皮バリアも一緒に壊れてしまう可能性があります。この結果、湿潤環境下と同様に、細菌に感染して趾間フレグモーネの発生率が高まります。
1年の間のいつであれ、気象状況がどのようであれ、皮膚の擦過傷の原因になる全ての事象の発生により、例え人の目に見えなくとも、細菌が病変から入り込んでしまいます。
趾間フレグモーネは、肥育成績を低下させる
肥育牛が趾間フレグモーネに感染したり他の跛行原因となる蹄病に罹患して慢性化すると、歩かなくなり、飼槽を訪問する回数が減少します。その結果、多くの牛で乾物摂取量の減少、平均日増体量の低下が見られ、最終的に肥育日数が延びてしまいます。
肥育牛における趾間フレグモーネの全体的な影響は、複数の要因によって決まります。進行する趾間フレグモーネ感染を正確に診断し、適切な治療を可能な限り早期に施すことで、その時点での牛の生産性だけでなく枝肉価値にまで及ぼされる負の影響を大きく抑えることが可能です。成長中の肥育牛が蹄病に対して多くのエネルギーと栄養素を割かなければならなくなる前の罹患後ごく初期に発見することができれば、肥育牛は治癒し、健常牛と変わらず生産を続けていくことができるかもしれません。
蹄病による増体不良と生産性への悪影響だけでなく、さらに治療費と治療のために牛を連れてくる労働力も、農場にとっては大きな経済損失です。
一般的に、舎飼いの肥育農場と比べて、放牧飼養ではより損失が大きくなるとされています。これは、罹患牛を見つけて捕まえ、削蹄枠場に入れて治療を行うのが放牧飼養の場合、より多くの時間と労力を必要とするためです。回復までの時間は個体によって変わりますが、趾間フレグモーネが治っていくに連れて、増体と生産性も元に戻っていくとされています。母牛もしくは種雄牛の繁殖性にも、趾間フレグモーネは負の影響を及ぼします。
趾間フレグモーネの見つけ方
趾間フレグモーネの初期徴候は、ロコモーションスコアが上がっていって跛行することです。患部が腫脹し始める前から、牛は痛みを感じます。およそ72時間の内に、蹄尖間の皮膚が劣化し、壊れていきます。
趾皮膚炎と趾間フレグモーネの1つの違いとして、趾間フレグモーネでは蹄冠部上の皮膚が副蹄に至るまで一周左右均等に腫れます。腫れ始めた部分から腫れがどんどんと酷くなり、内外蹄の蹄尖が離れていきます。病変が進行すると、悪臭を発します。
農場においては、毎日跛行牛がいないか観察することをお奨めします。早期発見こそが、治療成功のための鍵になります。
趾間フレグモーネ予防のための管理方法
毎日趾間フレグモーネの外部徴候がないかと跛行牛を観察するだけでなく、農場では飼養環境を適切に管理することも大切です。牛群内が湿潤環境になっていないかを確認し、皮膚の健全性を損なうような環境で牛を飼わないようにしましょう。
肥育牧場では、ぬかるみや穴、肢蹄を傷つけてしまうような場所がないようにしてください。除糞と敷料交換を適切に行うことも、蹄病予防になります。さらに、有効な蹄浴を行うことも趾間フレグモーネの発生を防ぐための1つの方法です。
定期的にロコモーションスコアを測定し、跛行牛を把握しましょう。適切な診断を行うことができれば、正しい治療プログラムを立てることができます。
適切な微量ミネラル給与プログラムが、趾間フレグモーネの予防になる
微量ミネラルを適切に給与することで皮膚の健全性と免疫機能を良好に維持されれば、趾間フレグモーネの発生を抑えることが出来ます。特に上皮の健全性を維持するためには、亜鉛が重要な役割を担います。新しい上皮細胞を生成することと、傷の修復を行うことの両方が、趾間フレグモーネの対策として重要です。
さらに亜鉛は、肉牛が趾間フレグモーネを引き起こす細菌に感染した際に免疫を動員する上で、迅速かつ強固な炎症反応を確立することも助けます。
趾間フレグモーネの発生率と重症度合いを抑えるためのジンプロ・ミネラルの給与
農場では趾間フレグモーネが発生することへの治療プログラムを検討するよりも、疾病の発生を抑える為に何をするかを考えることが重要です。適切に設計された飼料に、ジンプロ社のアベイラ亜鉛もしくは硫酸亜鉛メチオニンを添加することをご検討ください。1日1頭当り、亜鉛として最低でも360mg給与することで、皮膚の健全性と免疫機能が高まり、臨床疾患に対する抵抗性が強まります。
趾間フレグモーネに罹患してしまった牛には、ジンプロ・ミネラルの増給(1日1頭当り亜鉛として720mg給与)が推奨される場合もあります。特にストレスや気候などの要因によって採食量が低下している場合には、亜鉛の増給をご検討ください。生産ステージのより早い段階からアベイラ亜鉛もしくは硫酸亜鉛メチオニンを給与することができれば、牛が疾病罹患の危険性の高いステージを迎えるまでや高ストレスに晒されるまでの間に、より長い時間をかけて健全な上皮の生成と免疫による抵抗力を育むことができます。状況が改善して正常に戻った後に、給与量を元の推奨量に戻しましょう。
適切な飼養管理と栄養管理を実践することで、趾間フレグモーネの発生率と重症度合いを低減することができます。
趾間フレグモーネとその他の蹄病の詳細について、ジンプロ社が販売している跛行本をご覧ください。趾間フレグモーネを予防するためのアベイラ亜鉛プログラムの詳細については、弊社営業担当にご連絡ください。