魚とエビにおける免疫学がどの様に製品の質に影響を与えるのか
Share

魚とエビにおける免疫学がどの様に製品の質に影響を与えるのか

クラウディア・シルヴァ博士

ジンプロコーポレーション

アミノ酸や必須脂肪酸などの栄養素に加えて微量ミネラルを添加することで魚やエビの免疫システムを強固に出来ることが実証されています。過去10年間に渡り、私達は栄養学を養殖現場で応用するための知識を獲得し、それらを共有することに専念してきました。そのためにまず、水産生物のストレスを軽減し、その結果として健康や生産性を向上させるために何故微量ミネラル等の必須栄養素が重要な役割を果たすのかを理解することから始めました。そして最近、私達は業界の専門家であるベンジャミン・コスタ博士と共に講演する機会がありました。コスタ博士は2011年にポルト大学にて動物科学の博士号を取得され、現在はCIIMARのAnimal Health and Aquaculture部門でシニアリサーチャー及びコーディネーターとして勤務されています。本記事では、コスタ博士が発表された“魚とエビの健康を向上させるツールとしての栄養免疫学を利用する方法”の中に、実用的な情報がありましたのでご紹介します。

 

魚とエビにおける免疫学を理解する

魚とエビにとっての第一防御層は外的バリアであり、それらは免疫システムによって直接支えられています。他の動物種と同様に、魚とエビも自然免疫(出生時から備わっている迅速かつ非特異的な免疫反応)を持っておます。また魚は獲得免疫系(微生物が侵入してきた際に免疫システムが反応することによって得られる免疫)も持っています。これら2種類の免疫システムは複数の構造や細胞、液性因子によって制御されていますが、種によって異なることがあります。

次の表は、魚とエビにおける免疫システムの主な構成要素をまとめた表で、両者の主な相違点を示しています。

Image

免疫反応は魚種や、受ける外部刺激によって異なることに注意する必要があります。例えば、魚の生理的・免疫的状態は魚種によって異なりますし、年齢によっても左右されます(若齢魚の方が感受性が高い)。更に、養殖環境や条件(水深、ケージ、養殖密度等)によっても影響を受けます。従って、免疫反応を向上させるための栄養学的戦略は、魚種や養殖条件に合わせて調整してあげなければなりません。

これは、機能性飼料を開発し、応用することで実現可能です。

 

メチオニン添加が獲得免疫を強化する

機能的な栄養反応の例として、養殖飼料中にメチオニンを添加することで、免疫システムを向上させる可能性があります。それによる主な反応には、末梢白血球反応、補体反応、抗菌活性の上昇及び免疫細胞動員への影響、細胞性・体液性免疫反応などの炎症反応の上昇があります(Machado M., 2015; Azeredo R., 2017)。

次のグラフは、3つの試験飼料を給餌させたヨーロピアンシーバスに、病原細菌(フォトバクテリウムダムセラ亜種)を腹腔内感染させた際の斃死率の結果です。

Image

 

高品質な養殖飼料に藻類を配合する

藻類には高度不飽和脂肪酸(HUFA)や細胞壁多糖類、色素/ポリフェノールなどの免疫反応を向上させる、様々な生理活性物質が含まれています。

3種類の微細藻類(テトラセルミス、フェオダクチラム属、ナンノクロロプシス属)及び2種類の海藻(グラシラリア・グラシリス、ウルバ・リジダ)を含む飼料を給与した魚は、フォトバクテリウムダムセラ亜種感染時に白血球反応(好中球)が向上したことが分かりました。

Image

1週間の海藻給与の後、ウルバ・リジダを給与した魚で高い好中球反応が確認出来ました。それは、海藻が魚の免疫反応を向上させ、病原体に対してより強い抵抗力を付与したことを示唆しています。

 

水産生物における免疫増強 vs 免疫調節

ここからは、短期的または長期的な戦略、免疫増強と免疫調節の違いについて考えていきましょう。

免疫増強は自然免疫反応を活性化させるため短期的な反応として捉えるべきでしょう。長期的な免疫増強は、成長などの正常の生産機能に用いる栄養を使用するので、栄養要求量の増大により健康へ負の影響をもたらすことがあります。

一方で免疫調節は、宿主が感染した際のみに起こる免疫反応のことを言います。例えば、ある添加剤を数週間給与続けても免疫指標が変化しなかった場合でも、魚が感染した後に免疫反応が高まり、生存率が向上することがあります。従って、免疫調節のために栄養素を添加することで、長期的に健康をサポートする飼料戦略として考慮すべきだと言えます。
 

栄養免疫学において考慮すべき4つの点

1. 利用可能性:動物の健康状態を向上させるために多くの添加物と飼料原料を利用することが出来るが、大規模生産の場合利用が制限される場合があります。

2. 畜種とライフサイクル:特定の添加物の使用量は畜種、日齢を基に設定するべきです。

3. 短期的vs長期的戦略:免疫増強及び免疫調整物質を選ぶ時には、両方を考慮に入れるべきです。

4. 持続可能性:機能性飼料は、厳しい環境下で動物の健康状態を向上させる鍵となります。それによって、疾病の蔓延を防ぎ、持続可能性の向上及び抗生物質の使用低減に貢献出来るでしょう。

 

魚とエビの専門チームと繋がる

私たちの優秀な専門チームは、栄養価の高い製品を生産し、より健康でより持続可能な食料生産を可能にしながらも、魚とエビの免疫を向上させ、経営の永続性を支えるために尽力しています。高品質な栄養素を通じて養殖業を成功に導くためのご質問、ご相談は弊社営業担当者までお問い合わせ下さい。

関連記事
ジンプロ・ミネラルを用いた、水産生物養殖時のストレス管理
水産生物栄養の変化