鶏における跛行 – どれ程の損失が出るのか?
Share

鶏における跛行 – どれ程の損失が出るのか?

マルコ・レベッロ博士、獣医師

ジンプロコーポレーション

跛行は鶏の生産性と収益性を低下させるため、近年の養鶏業界において大きな問題となっています。世界中において鶏の跛行の最も大きな原因となっているのが、細菌性軟骨壊死骨髄炎(BCO)です。BCOは、30週齢以降のブロイラーの少なくとも1.5%が罹患しており、流行すると鶏群の15%が罹患するとされています。

 

細菌性軟骨壊死骨髄炎(BCO)とは何か?

BCOとは、微小破壊(専門用語では骨軟骨症)が起こりやすい大腿骨近位部や脛骨成長板、関節軟骨の成長を支える橈骨部、極度のねじれや機械的ストレスを受けやすい胸椎といった箇所での細菌感染によって発症します。鶏は生後30日間で急速に成長するので、一貫した強固な成長板と関節軟骨が必要となります。もし、適切な時期に十分量の栄養が給与されていなかったり、外傷が蓄積している場合、成長板は厚く、脆くなり骨軟骨症になりやすくなります。その結果、細菌感染症を引き起こしてしまいます。一般的に、感染症は、血流中の病原体を介して、消化器官や呼吸器系に侵入した後、成長板へと到達します。

感染症に罹ると、鶏の正常な行動が制限され、飼料摂取量や飲水量が減少することがあります。また、疾病罹患率や斃死率が上昇してしまう主な原因にもなります。BCOには抗生物質治療が良く用いられます。しかし、最近の研究から、健康な腸管がBCOを防ぎ、制御するのに役立つことが明らかになりました。

BCO研究の権威であるアーカンサス大学家禽研究センターのロバート・ワイドマンJr.博士は、ストレスや足場の不安定性、免疫システムの弱さがどの様にBCOの発症に関係しているのかを調べるために金網床を用いた機械的なストレスモデルを作成しました。

「BCOは深刻な跛行の問題です。臨床上健康であった鶏が、突然次の日には立つのをためらう様になってしまいます。そして、3、4日後には完全に動かなくなり、病性鑑定をすると、大きな細菌性腫瘍が大腿骨骨頭や脛骨骨頭、脊椎に確認出来ました。」と、ワイドマン博士は述べています。

斃死は28日齢頃から著しく増加し始め、養鶏場では、感染によって鶏を失うだけでなく、大量の飼料費も無駄になってしまいます。

 

BCOを防ぎ、管理するのに役立つ方法

飼養管理は重要です。BCOは急速に蔓延するため、群の監視回数を増やす必要があります。また、群の健康状態を高める措置を講じる必要もあります。

「近年の疫学研究から、BCOの発生は、低レベルの病原性細菌の垂直感染から始まり、その後、鶏から鶏への水平感染が起こり、鶏舎中に蔓延してしまうことが示唆されています。従って、初生雛がBCOの病原体を孵化場から鶏舎へと持ち込んでいる可能性が非常に高いです。」と、ワイドマン博士は述べています。

以上のことから、孵化場の衛生管理は、感染の可能性を抑えるために重要となります。鶏舎の床に落ちている卵や汚れた卵は決して孵化場へは導入しないで下さい。孵化前後の孵化場の温度も管理すべきです。孵化場内または孵化後に暑熱ストレスに晒されるとBCOへの感受性を高めてしまいます。また、育雛時の温度が高すぎると、BCOへの感受性が高くなりやすいとされています。

ワイドマン博士は、孵化場から直接導入された初生雛は、垂直感染しているかどうかの指標である大腿骨頭壊死及び脾臓の細菌感染に関して検査することを推奨しています。

また、BCOに関連する病原体が配水管や給水器の中でバイオフィルムとして存在しているかもしれませんので、一度鶏舎に雛を導入した後は、水質と衛生状態に気を配ることが重要です。更に、足場の不安定さが、成長板の微小外傷を引き起こし、そしてそれが成長板における細菌感染に繋がることがワイドマン博士の試験から明らかになりましたので、敷料の質を高く保つことも重要です。

 

鶏への栄養がBCOの蔓延を抑える

BCOは、敷料上の糞便、あるいは汚染された給水器やニップルから病原性細菌を経口摂取することで、消化管内に細菌が定着し、その後腸粘膜上皮細胞を通り血流へ侵入することによって、水平感染します。

腸管内部は腸粘膜上皮細胞の層から構成されています。これらの細胞は、“タイトジャンクション”と呼ばれるタンパク質複合体によって互いが結合し細胞間隙を埋めることで、細菌や病原体、毒素が腸管内部から血流に侵入するのを防いでいます。

暑熱ストレスや細菌、飼料汚染などの要因はタイトジャンクションの機能を弱めてしまい、その結果“リーキーガット”と呼ばれる状態に陥ってしまいます。リーキーガットに陥ると、細菌や病原体、毒素などの分子が細胞間隙から侵入し、結果として細胞損傷や腸管の炎症を引き起こします。

ワイドマン博士の試験から、プロバイオティクスと微量ミネラルがこの細胞間の結合を強固にし、病原性細菌の腸管から血流への侵入を抑制するのに役立つことが明らかになりました。プロバイオティクスはブロイラー種鶏からの垂直感染を減らすことが出来るため、その結果、雛が鶏舎へ病原体を持ち込む可能性を低下させられるでしょう。

亜鉛、マンガン、銅といったジンプロ・ミネラルは、腸管上皮細胞のタイトジャンクションの健全性を向上させ、病原性細菌に対してより迅速な免疫反応の獲得を助けることによって、ブロイラー鶏のBCOへの感受性を低下させるでしょう。

更に、細胞外の銅は、成長板軟骨部のコラーゲン繊維の架橋構造を強固にする役割があるリジルオキシダーゼ酵素の重要な補因子です。また、亜鉛と銅も

骨基質形成や骨の再形成において重要な役割を担っています。コラーゲンの架橋構造が強固であると、骨軟骨炎による微小破壊の発生が減少し、成長板に細菌感染の原因となる創傷部位が少なくなることが、試験から明らかになりました。更に、ジンプロ・ミネラルをブロイラー鶏に給与することで、BCO跛行の重症スコアが低くなることがワイドマン博士の試験から明らかになりました、

鶏における炎症や炎症がどの様に経営に影響を与えるのかに関するご質問、ご相談は弊社営業担当者までお問い合わせ下さい。

 

関連記事:上皮の健全性を向上させることでBCOを防ぐ
     
リーキーガット症候群や腸管の炎症低減に必要な亜鉛