子牛の離乳前後におけるジンプロ・ミネラル給与
ジェイソン・ラッセル博士
ジンプロコーポレーション
*本記事はアメリカにおける事例です。日本とアメリカの繁殖農場の飼養形態の違いに関しましては、次の記事をご覧ください。
日本とアメリカの繁殖農場における飼養形態の違い
アメリカの獣医師や飼料設計士は共に、放牧期においては40%の肉牛が、微量ミネラル添加を全く受けていないと推定しています。多くの肉牛農家の方々が、ジンプロ・ミネラルのような優れた有機ミネラルを、繁殖成績向上のために給与すると考えていると思われます。従って、コストを抑えるために、繁殖時期のみかそれまでの間のみに母牛及び種雄牛への給与を行っている様子が見受けられます。
分娩から繁殖期のスタートまでにおける飼養管理は、非常に重要です。この間における優れた微量ミネラル給与は、胎児の発達や泌乳、免疫機能、増体と生産のために大切です。粗飼料品質が低い場合でもその必要性が高まります。肉牛に最高の結果を出してもらうためには、妊娠後期のたった80〜90日間の給与では十分であるとは言えません。
離乳の問題点と離乳子牛が置かれる困難な状況
離乳は子牛の一生において最もストレスがかかる時期です。多くの子牛で、この期間は飼料摂取量が低下します。離乳するまでに、子牛は飼槽を見たことがなかったり、自動的に給水される水槽に慣れていない場合もあります。
飼料摂取量の低下に加えて離乳ストレスがかかることで、子牛は摂取するエネルギーと栄養素に制限がかかっている状態です。この状態から、維持と増体に対して優先的にそれらを用いることで、免疫機能が低下してしまいます。
肥育農場に移動した際の生産性を高めるジンプロ・ミネラル
離乳子牛が直面する問題において、迅速で強固な免疫反応を築く上で、微量ミネラルが鍵になります。離乳前後においてジンプロ・ミネラルを給与した結果、子牛がより元気であれば、その後肥育牧場に導入された際もより多くの飼料を摂取し、導入初期における増体もより大きくなります。
ジンプロ社はIBRVウィルス感染を克服することへのジンプロ・ミネラルの影響を調べるために、テキサス州立農業研究所とノースカロライナ州立大学と試験を行いました。
本試験では、40頭の去勢オス子牛が供試されました。これらの子牛の母牛は体重で選別され、2つのグループに分けられました。1つのグループにはジンプロ・ミネラル由来の亜鉛とマンガンを給与し、もう1つのグループには無機の亜鉛とマンガンを給与しました。給与期間は分娩100日前から、離乳(7ヶ月齢頃)までです。
1月に子牛が生まれ、8月の離乳時の平均体重は266kgでした。離乳後、素牛達はノースカロライナ州ラレフから2,500km離れたテキサス州ブッシュランドにあるテキサスA&M大学の肥育研究農場に輸送されました。
これらの素牛には、肥育農場ではIBRVのワクチン接種は行いませんでした。また、母牛が妊娠期に摂取していたそれぞれの微量ミネラル給与プログラムを継続しました。素牛はストレス期である導入後28日間、飼料中にそれぞれの微量ミネラル源を加えて給与が行われ、その後29日目にIBRVのクーパー株を用いて攻撃試験を行いました(IBRV攻撃)。この際、それぞれの区において微量ミネラルの給与は継続されています。
- ジンプロ区:ジンプロ・ミネラル由来の亜鉛50ppm、マンガン40ppm
- 無機区:無機源由来の亜鉛50ppm、マンガン40ppm
ジンプロ・ミネラルを給与していた素牛は飼料摂取量が維持され、ストレス期とIBRV攻撃においても、増体量が大きいという結果になりました。ジンプロ・ミネラルの給与によって、素牛導入後に直面するストレスと免疫上の問題に対してより抵抗性が高まったということです。
ジンプロ区と無機区の去勢オス牛の出生時体重に差はありませんでした。肥育農場到着時の体重は、ジンプロ・ミネラルを摂取していた母牛から生まれた素牛の方が、無機ミネラルを摂取していた母牛から生まれた素牛に比べて7.6%(17kg)重かったと報告されています。さらに、ジンプロ区の去勢オス牛は導入後28日目の体重が8.7%重いことも分かりました。この増体の改善は、ジンプロ区の素牛は乾物摂取量が多かったことによってもたらされました。肥育牧場に輸送後28日目において、ジンプロ区の去勢オス牛は8.5kgの飼料を摂取したのに対し、無機区の去勢オス牛は7.6kgでした。この結果は、母牛を通じてジンプロ・ミネラルを摂取させることで、去勢オス牛の輸送ストレスや新しい環境への馴致を助けたことを示しています。
IBRV攻撃時において、ジンプロ区の去勢オス牛は乾物摂取量が20%低下しました。これに対して、無機区の去勢オス牛は乾物摂取量が49.9%も低下しました。さらにジンプロ区では、体重がそれほど低下しませんでした。無機区では10日間に亘って体重減少が続きましたが、ジンプロ区では6日に抑えられました。ジンプロ区の去勢オス牛はIBRV攻撃時においても直腸温度が無機区に比べて低く、熱発が少なかったという結果が得られました。
離乳前後のジンプロ・ミネラル給与の継続
子牛が母牛からどうやって放牧草を食べるかを学んでいる期間であっても、数日齢の子牛がミネラル・フィーダー(写真探して追加)に頭を突っ込んでいたり、液状添加物を舐めている様子を発見することは珍しくありません。少なくとも離乳の90日前からアベイラ4に栄養的に慣れさせていくことは良いアイディアです。しかし、もし農場で通年アベイラ4を給与しているのであれば、すでにこの馴致は済んでいます。
農場では飼料設計を行う際に、子牛に給与するクリープフィード1トン当りに1kg程度のアベイラ4を加えることをご検討ください。これは離乳前の子牛の1日摂取量、即ち体重の1%に相当します。子牛を離乳牛群に入れ、素牛出荷準備を行うまでの間は、成牛向けアベイラ4推奨量の全量である1日1頭10g給与することをお奨めします。
飼料摂取量低下への保険としてのジンプロ・ミネラル給与
離乳は子牛の一生において最もストレスがかかる時です。離乳子牛は他のストレスがかかった状態の牛と同様に、まず飼料摂取量が低下します。ジンプロ・ミネラルは肉牛の体内蓄積に優れていますので、離乳前後にアベイラ4を給与することは飼料摂取量が低下した場合の保険になります。牛が十分な量の餌を食べなかったとしても、ジンプロ・ミネラルは体内により多く蓄積するので、栄養要求量を満たすことを助けます。
アベイラ4のような優れた微量ミネラルを農場でどのように給与するのかの詳細について、弊社営業担当者にご連絡ください。
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