亜鉛給与でPRRSウイルス複製を抑制する
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、豚群で見られる季節性のウイルスで、一般的に10月から4月の間で急増し、夏の期間になると減少します。
しかし、米国において2021年は少し異なりました。例年より重症化しやすいPRRSの新株が夏を通して生き延びたのです。そして、繁殖の問題を引き起こすだけでなく、この新株は、母豚と離乳子豚共に高い斃死率をもたらし、業界内でこの秋冬にどれだけ状況が悪化するのか懸念していました。
PRRSを制御するために、ワクチンやバイオセキュリティーといった予防策がありますが、適切な栄養も同様に重要です。特に、試験から亜鉛はPRRSの様なウイルスの複製速度を遅らせることがわかっています1。
離乳子豚や母豚に、PRRSや他のウイルス感染に対して迅速な免疫反応を引き起こす能力があれば、強健な豚を育てるための重要な一歩を踏み出すことが出来ます。
PRRSの様なRNAウイルスの複製を理解する
人間や動物におけるその他のウイルスと同様に、PRRSも鼻や口を介した濃厚接触または空気感染によって感染します。一度豚の体内に侵入すると、ウイルスは肺の免疫細胞を攻撃し始め、免疫システムと交戦します。
もし、PRRSウイルスから細胞を守るための免疫反応が十分に迅速でなければ、免疫システムは、豚を守るためにそれらの感染した細胞を殺してしまいます。また、働くことの出来る免疫細胞数が少ない場合、インフルエンザの様なその他のウイルスや疾病と闘う能力が低下してしまいます。これら全てが起こると、ウイルスは複製と増殖を続け、肺のその他の免疫細胞へ拡散していきます。
豚インフルエンザやロタウイルス、コロナウイルス、PRRSはRNAウイルスです。つまり、二重螺旋構造をしているDNAウイルスと異なり、一本鎖のRNAから構成されています。
RNAウイルスは一本鎖で構成されているため、変異が容易で様々な型に変化します。そして、通常、ワクチンは1つの型から作られますので、異なる型が存在することで、治療やワクチン接種を難しくします。ここで、PRRSウイルスの複製を抑制するために、亜鉛が役に立つのです。
微量ミネラル添加によってPRRSを抑える
RNAウイルスが複製する際には、RNAポリメラーゼと呼ばれる酵素がウイルスDNAを転写しRNAを合成し、他の細胞へ拡散します。その際に、二価金属または二価金属イオン(例:Mg2+)が必要となります。
マグネシウムは豚の体内の多くの機能において重要な栄養素ですが、適正量でなければなりません。この場合例えるなら、RNAポリメラーゼは列車で、マグネシウムはその列車が走り続けより多くのウイルスを生成するための線路を作り続ける様なものです。
しかし、亜鉛はマグネシウムに変わり、線路を作るのを遅らせ、ウイルスの複製を大きく抑制出来ます。細胞内の複製反応において、実際にはマグネシウムよりも亜鉛が求められています。この反応で亜鉛が優先的に利用されるためには、亜鉛が細胞内に存在してなければなりません。亜鉛が利用可能であれば、マンガンが働く前に亜鉛が利用されるでしょう。
従って、豚栄養プログラムにジンプロ・ミネラル由来の亜鉛を組み込むことが重要となるのです。ジンプロ・ミネラルは現在販売されているどの亜鉛源よりも代謝的に利用されますので、より多くの亜鉛を免疫細胞に動員でき、PRRSの様なウイルスの複製を抑制することに役立つでしょう。
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引用文献
1 te Velthuis AJW, van den Worm SHE, Sims AC, Baric RS, Snijder EJ, van Hemert MJ (2010) Zn2+ Inhibits Coronavirus and Arterivirus RNA Polymerase Activity In Vitro and Zinc Ionophores Block the Replication of These Viruses in Cell Culture. PLoS Pathog 6(11): e1001176. https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1001176
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