冬からの準備が、秋の乳牛の蹄病に繋がる
Share

冬からの準備が、秋の乳牛の蹄病に繋がる

ロジャー・オルソン

ジンプロコーポレーション

今は冬の真っ只中ですが、農場では秋に跛行が増えます。即ち跛行は、季節性の問題であると感られると思います。秋の跛行牛増加によって乳量が落ちたり、繁殖成績が悪化したり、余分な削蹄費用、包帯代金、その他治療費のために費用が嵩むことがあるかもしれません。

農場において、なぜ跛行が突然大発生するかの理由について、不思議に思ったことはありませんか。事実として、この原因は、大発生前の夏の間の農場の飼養管理や牛の状態に戻って考える必要があります。

過去の記事で、夏の暑熱ストレスが秋や冬の季節的な跛行の原因になることについて述べさせて頂きました。それ以外にもこの季節性の跛行問題に影響するいくつかの状況があります。

夏はまだ先です。今が農場の夏の状況を検討する上で良い時期です。来年の季節的な跛行の問題を防ぐために、今から改善を行っていくことが大切です。

 

季節的な跛行の原因となる一般的な状況

農場において、季節的な跛行を引き起こしている可能性がある、夏に起きている一般的な状況について考えてみましょう。

・濡れた状態

外が暑くなると、牛はより多くの水を飲み、より頻繁に尿をします。その結果、牛は水浸しになった糞の上に立つ時間が延びます。一般的に暑熱対策として用いられているミストやスプリンクラーは、暑熱ストレス下における効果的な管理ですが、飼養環境を乾燥させることはありません。このような状況で起立時間が延長すると、蹄の角質は柔らかくなり、蹄病変が形成されやすくなります。

・起立時間の延長

暑熱ストレスを感じている牛は横臥時間が短くなり、体を冷ますために起立時間が長くなります。牛は立っていると、空気に触れる体表面積が広くなり、熱をより簡単に下げることができます。反対に寝ていると、体表面積の50%が熱を放散できない状態になります。さらに横臥状態は体を締め付けている状態なので、牛が呼吸を荒くする(パンティングする)には、立ち上がっている方が容易です。起立時間が延長することで、後肢外蹄の中にある蹄骨から過度な圧がかかり、蹄底潰瘍病変を形成します。

・不安定な採食行動

暑い夏の間、牛は気温が下がる夜に採食することを好みます。しかし夜は、牛にとって十分な頻度で餌押しを行うことが困難です。乳牛は毎日、少量の餌を複数回に亘って食べることが理想とされています。一度に大量の餌を食べると、ルーメンpHが変わります。その影響で肢蹄への血流が滞り、低品質な蹄の角質が生成され、摩耗の影響も大きくなります。従って、1日中牛の口が届く場所に餌がある状態にすることが重要です。

・不十分なハエ対策

ハエ対策が適切に行われていない場合、牛が不快になります。ハエが大量にいる牛舎では、牛は常にストレスを感じ、特定の場所にギュウギュウに集まります。その結果、適切な横臥時間を確保できず、蹄の角質が大きく摩耗します。さらにお互いに熱放散を行う牛が固まっている事で、暑熱ストレスも強くなります。

・不十分な照明管理

牛は、特別に優れた感覚で生きている動物ではありません。例えば、暑い日に非常に明るい場所を見ると、実際の温度に関係なく、本能的にその場所が牛舎で一番暑い場所であると考えてしまうことがあるかもしれません。実際にはそこが牛舎内で最も換気の良い場所だとしてもです。結果として、牛は牛舎内で日陰を探して歩き回り、起立時間が延長します。

昨夏、どこの農場でも、程度の違いこそあれこれら全てが起こっていました。農場において、何が一番の問題だったのか、そして来夏に向けてどのような改善を行うことができるかについて、ジンプロ社にお手伝いさせてください。

 

来年の季節性の跛行問題を減らすために、今決める

次の秋の跛行を減らすために、農場の施設を評価し、記録を分析して、夏に向けてどの環境を改善するかを決めるのに、今は最適のタイミングです。

ジンプロ社のサービスをご活用されながら、以下のことをご確認ください:

・暑熱対策とカウコンフォート

ジンプロ社のFirst Step護蹄管理プログラムを用いて、農場の牛床デザインを評価したり、適切な換気扇の設置台数と設置位置を検討したり、牛舎全体を通しての空気の流れと風速を計測したり、通路の状態を観察して、カウコンフォートを最大限に高めるお手伝いをします。

・牛がいつでも餌を食べられる様にする

餌押しが頻度高く行われていることをご確認ください。日が落ちてからも、十分に行われる状態を目指すことが望まれます。

・維持削蹄のスケジュールを決める

乳牛には年2回の維持削蹄を行うことが推奨されます。暑熱ストレスによる影響の全てを打ち消すことは出来ません。そして通路が濡れた状態を0にすることは不可能です。農場で管理可能なことの1つとして、蹄を望ましい形で維持することがあります。特に後肢の内外蹄全体で均等に負重を支えるようにしてください。もし蹄のバランスが悪い状態で夏を迎えると、秋に重度な蹄病変が形成される危険性が非常に高くなります。

 

今日から始めましょう

もし昨年の秋から冬にかけて季節性の跛行問題で余計な削蹄費用、包帯や余分な治療費用がかかったのであれば、それは夏に牛が経験した一般的な状況によってもたらされていると考えられます。農場の状態を評価し、来年の季節性の跛行を予防したり減らすために改善を行っていくことに、早すぎるということはありません。

この冬に行うことに優先順位を付け、春や夏に向けて準備するために、ジンプロ社の情報を是非ご活用ください。

関連記事:
暑さに打ち勝て!暑熱ストレス管理と跛行予防
微量ミネラルを適切に給与することは、牛の跛行と繁殖に確たる費用対効果をもたらす