日本とアメリカの繁殖農場における飼養形態の違い
ジェイソン・ラッセル博士
ジンプロコーポレーション
アメリカの肉牛業界にとって、日本は変わらず最大の輸出先ですが、アメリカ国内における和牛消費量は伸びています!上記の通り、日本とアメリカの肉牛業界には数多くの相違点がありますが、同時に根幹には似ている箇所も多くあります。高品質の牛肉生産を追い求めるという目標も、そのうちの1つです!
アメリカでは3,200万頭の繁殖母牛が飼養されており、日本では約62万頭飼養されています。アメリカにおける繁殖農場1軒当りの平均繁殖母牛飼養頭数は44頭であるのに対し、日本では15頭です。アメリカでも肉牛農家の高齢化が問題となっており、日本での農場主の平均年齢が60〜65歳に比べて少し若いだけで57歳です。また、アメリカの繁殖母牛のおよそ56%が100頭以上飼養の大規模農場で飼養されていますが、これはアメリカの全農場軒数の10%に過ぎません。日本でも、100頭を超える大規模飼養の農場は、全体の1.5%程度です。アメリカにおいて50頭以下飼養の農場の多くは、副業としてか、穀物農家もしくは他の家畜も飼養している農場の一部門として営まれています。
日本とアメリカの繁殖農場において最も大きく異なる部分は、飼養形態と言えるでしょう。日本の繁殖農場の多くは舎飼いであることに対して、アメリカではほぼ通年放牧を行なっており、子牛も大半が親付けです。従って、アメリカの繁殖農場では自然環境が非常に重要になります。一般的にアメリカの子牛は5〜7ヶ月齢で離乳(母子分離)されるため、干ばつなどといった環境要因が経営に大きく影響を及ぼします。干ばつが起きると、放牧地の牧草の量が減ってしまうために、場合によっては子牛を3ヶ月齢未満の早期に離乳する必要が出てきます。
アメリカでは春もしくは秋の季節分娩が行われています。日本では9割以上の牛が人工授精されているのに対して、アメリカでの人工授精実施割合は10%程度に過ぎません。乳牛では大半が人工授精されるのに対して、肉牛では10%程度であるために、種雄牛選抜や後継牛選抜の考え方は、農場によって大きく異なります。月齢や増体、体の見た目で選抜を行う農場もあれば、血統、期待後代差、推定形質値、遺伝分析結果などを重要視する農場もあります。
アメリカでは繁殖母牛を放牧飼養していますので、栄養管理も日本の母牛管理とは大きく異なって見えるかもしれません。アメリカでは様々な気候帯が存在するために、1頭当りの飼養スペースも地域によって大きく異なります。降水量と土壌品質が安定して高い地域では、放牧草の品質も良く、母牛と子牛の1ペア当り0.8ヘクタールの広さで飼養できる場合があります。しかし別の地域では、1ペア当り20ヘクタールの土地が必要な場合もあります。放牧草だけでは賄えない栄養素は添加しなければいけません。アメリカの繁殖農場では定期的に土壌分析を行い、放牧草のサンプルを分析した上で、栄養管理師と添加の必要な栄養素について話し合います。冬は母牛にTMRを給与する繁殖農場もありますが、夏と変わらずにフリーチョイスか、週に何度か添加物を給与する農場が多くを占めます。
日本の生産者の方々と同様に、アメリカの生産者も高品質の牛肉生産を目指しています。そのためには、牛を健康に飼養することが最も重要であり、最も収益性が高いと考えています。
健康な牛の飼養には、高品質な粗飼料を給与することによりタンパク質とエネルギーを充足させるだけではなく、ビタミン、マクロミネラル、微量ミネラル、そして水の給与が不可欠です。これらの栄養素は、主に水槽内に液状飼料として投入したり、タブと呼ばれる糖蜜飼料への混合、鉱塩、もしくは粉末のままフリーチョイスで給与します(下記写真)。タブは50kg〜100kgのものが一般的で、1日1頭当り100g〜450gと幅広い舐食量に設定できます。水分が2〜4%であり大量に摂取することはありません。粉末飼料は、フリーチョイスで給与しても1日1頭当り85〜115g程度の摂取に設定可能で、内容分を要求量通りに給与することができます。粉末飼料は10〜25%の塩を含む製品が多く、嗜好性を上げるために穀物副産物や糖蜜を混合することがあります。全ての形状のフリーチョイス飼料に、アベイラ4を添加することが可能で、通年で給与することが出来ます。
アベイラ4は繁殖農場において、繁殖成績、子牛の健康状態、蹄の健全性、初乳品質の改善が研究によって実証された1:1結合の有機微量ミネラルの複合製剤(亜鉛、マンガン、銅、コバルト)です(※コバルトは無機ミネラル)。日本の和牛飼養と同様に、アメリカでも初乳品質は重要です。特に大規模のアメリカの繁殖農場で、母牛が知らない内に分娩した場合、新生子牛の初乳の摂取量を把握することは難しいです。しかしアベイラ4を給与した母牛では初乳中の免疫グロブリン量が高く、子牛の受動免疫が確立される可能性が高まることが研究から判明しています。母乳由来の初乳によって受動免疫が確立された子牛はその後、自身で能動免疫を発達させていかなければなりません。ジンプロ・ミネラルを母牛だけでなく子牛にも給与することで、免疫機能を発達させるために必要な微量ミネラルを補ってあげることができます。放牧飼養されているアメリカの繁殖母牛では、護蹄管理も重要です。アベイラ4を始めとしたジンプロ・ミネラルの給与によって、蹄の角質組織の健全性が保たれることがよく知られています。また、アメリカの繁殖農場では人工授精、本交、その双方を用いる場合でも、妊娠までの授精回数低減のためにアベイラ4が重要であると考えられています。特にアメリカでは季節分娩を行うことから、全ての母牛を決められた期間内で妊娠させて、短い範囲内でまとめて分娩させることが求められますので、繁殖効率が重要視されます。
日本とアメリカの肉牛業界には数多くの相違点がありますが、同時に根幹には似ている箇所も多くあります。牛を健康に飼養し、高品質の子牛と牛肉を生産することはその最たるものです。アベイラ4を給与することは、牛の健康状態の維持と、農場利益向上に寄与します。
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