移行期牛のチェックリスト:飼養管理向上と栄養対策
ジェフ・ウェイヤーズ博士
ジンプロコーポレーション
乳牛の一生において、移行期はハイリスクな時期です。分娩のおよそ3週間前から3週間後に当るこの間の飼養管理が上手くいっていないと、泌乳成績と繁殖成績に悪影響が及び、跛行の発生割合が増え、早期淘汰の危険性が高まる場合もあります。
乳牛において移行期は、免疫機能低下のリスクがあるという結果が様々な試験で報告されています。最大で25%程度まで飼料摂取量が低下することに加えて、環境的、社会的、栄養的なストレス要因が牛に降りかかることで、それ以外の問題も引き起こしてしまいます。
移行期牛のチェックリスト
飼料設計士、コンサルタント、生産者の方々が農場で移行期の飼養管理を改善するために作られたポイントをご紹介します。
クロースアップ期
- 乾物摂取量を観察しましょう。乾物摂取量のモニタリングは、しばしば見過ごされることが多い管理手法です。しかし、この状況変化を観察する簡単な方法が、その先に起こり得る問題を早期に発見する良い指標になります。
- 飼槽を毎日清掃しましょう。牛の食欲を落とす悪くなった餌や熱を持った餌を除きます。
- 過密飼養にならないように、収容可能頭数の100%以下に飼養密度を抑え、それぞれの牛に十分な飼槽スペースを与えましょう。1頭当りおよそ76cmの飼槽スペースが必要です。スタンチョンを設置している場合は、その幅を61cm以上とし、スタンチョンの全体数の80〜85%を最大収容頭数とします。
- 可能であれば牛群移動を行わないようにします。特に分娩前10日以内の移動は避けてください。クロースアップ牛群には最低でも14日以上滞在するようにしてください。
- 移行期牛群の牛舎を建設する際には、1年で最も分娩が集中する8週間で予想される分娩頭数に20%加えた容量で設計してください。この設計によって、通年で移行期牛に必要なスペースを提供することができます。
- もし群移動が必要な場合、1週間に1度、10頭以上のグループで移動することで、社会性の変化によるストレスを低減するようにしましょう。
- 暑熱対策を施してください。十分な日陰、水(飲用および冷却用)、空気の流れを作りましょう。
- 未経産牛を経産牛と同居させないようにしてください。同居させると、高齢の牛が未経産牛に対して社会的に優位になってしまいます。また、未経産牛群を作り、未経産牛の栄養要求量に合った飼料を給与するようにしてください。
- クロースアップ牛群は1時間に1度観察に行きましょう。分娩兆候を示している牛は分娩房に移動します。
- 清潔で乾燥した環境を維持してください。移行期は飼料摂取量が落ちているにも関わらず、環境的なストレスがかかると代謝要求量が増加します。これは分娩後、フレッシュ牛群での乳房炎発生の危険性の増大に繋がります。
分娩房
- 分娩房がある場合、分娩の直前に限って牛を移動するように努めてください。例えば子牛の肢が見えている場合や、それ以外の明確な分娩兆候を示している場合です。第1ステージの早期に牛を動かしてしまうと、死産の危険性が高まります。分娩房には牛を12時間以上滞在させないようにしてください。
- 分娩房は清潔かつ乾燥されており、カウコンフォートが高い状態を維持してください。清潔で乾燥した敷料を大量に投入し、頻度高く交換してください。
- 分娩房を1時間に1回訪問し、分娩の進行を確認してください。
- 出生後速やかに新生子牛を分娩房から出し、母牛には清潔な水と新鮮なTMRを給与してください。
フレッシュ牛のモニタリングと処置
- フレッシュ牛の疾病の兆候を観察して、適切な処置を行える体制を作りましょう。
- 飼料摂取量を観察しましょう。フレッシュ牛の生産状況を把握できます。
- 初期のフレッシュ牛における肢蹄問題の発生兆候を見逃さないようにしてください。分娩前に起きる要因と重なって、フレッシュ牛は跛行の危険性が高まります。
- 暑熱対策を行ってください。十分な日陰、水(飲用と牛体冷却用)、空気の動きを与えてください。
- 環境性および社会性のストレス要因を可能な限り排除してください。牛群移動を減らすこと、飼養密度を低く抑えること、新鮮な飼料と水を容易に摂取できるようにしてあげることが大切です。
- 可能であれば、分娩後4週間以内の乳成分を分析し、周産期疾病の発生状況を記録することで、現在の農場における移行期牛プログラムが上手くいっているかどうかを評価しましょう。
移行期牛へのジンプロ・ミネラル
前述の飼養管理手法に加えて、移行期牛プログラムの成功のために、最適な微量ミネラル栄養素の給与をご検討ください。乾乳期から泌乳期にかけてのジンプロ・ミネラルの給与は、牛の健全性の維持のために重要です。給与によって、繁殖性の改善、蹄の健全性の維持、乳量及び乳成分の増加が期待されます。
数多くの査読済み論文が、ジンプロ・ミネラル添加の有用性を示しています:
- 繁殖成績の向上
- 代謝障害による受精への悪影響を最小化
- 体細胞数の減少
- 蹄の健全性の維持
さらに、ジンプロ社にしか製造できない特別な形状を有するジンプロ・ミネラルを給与した母牛から生まれた子牛は、出生時の体内における微量ミネラル蓄積量が高いという利点から、出生時の直腸温度が低く、増体率が改善したことも研究から判明しています。これは、妊娠時に胎盤を介して栄養を受け取っていたことに加えて、母牛の初乳中のIgG濃度が高まった結果であると考えられます。
ジンプロ・ミネラル由来の微量ミネラルを上記の飼養管理手法に組み込むことが、泌乳初期における生産性を高め、早期淘汰の危険性を下げ、繁殖成績を改善し、農場の生産目標と収益目標達成の一助となります。
効果的な移行期牛管理手法についてのさらなる情報と、ジンプロ・ミネラルがどのようにして泌乳期の生産性を高めて淘汰の危険性を下げ、繁殖を成功に導くのかについての詳細は、弊社営業担当にお問い合わせください。